『旧宮殿にて 15世紀、ミラノ、レオナルドの愉悦』 [ミステリー]
『旧宮殿にて 15世紀、ミラノ、レオナルドの愉悦』 (光文社文庫)
- 作者: 三雲 岳斗
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 文庫
『アスラクライン』の三雲岳斗の非ライトノベルの小説。謎解きものなので、ミステリなのだろうか。
ミラノの宰相ルドヴィコやらによって持ち込まれる謎を、才媛チェチリアとともにレオナルドが解く、という構図で進む連作集。
レオナルド・ダ・ヴィンチが、天才肌のおじさん、という感じではなく、天才肌だが付き合いにくい、個性ある人物として描かれているなど、漠然とした一般のイメージを崩すような描き方は、ちょっと意表をつかれた感じがした。
消えた絵画、監禁状態から失踪した女性など、不可解な事件を鮮やかに解くとともに、(当時の)最新の科学的知見を活かしているあたり、天才科学者・レオナルドという存在を活かしたミステリになっているといえるのではないか。
なお、本書以外にもシリーズ作品があるようなので、そちらも読んでみたいが、まだ本にはまとまっていないのかな? 少なくとも文庫にはないようだが・・・
★★★★
『海泡』 [ミステリー]
『手焼き煎餅の密室』 [ミステリー]
『玻璃の天』 [ミステリー]
北村薫、ベッキーさんシリーズ第2弾。シリーズ最終巻の『鷺と雪』が直木賞を受賞したので、それでしった人も多いかもしれない。
昭和初期の東京を舞台に、良家の子女とその運転手が出会う謎と謎解き。この『玻璃の天』には表題作他2編の計3編を収録。
昭和初期の時代を描くことにも作者の力が発揮されていてそれも素晴らしいが、この後迫りくる時代の足音が忍び寄ってきているところは、語り手が令嬢であることを考えれば、どこか悲しくもある。
シリーズ最終巻が文庫落ちするには少し時間がかかりそうなのが待ち遠しい。
★★★★
『古書店アゼリアの死体』 [ミステリー]
若竹七海の旧作で、読んだことがあるような気もしましたが、そうだとしてもほとんど忘れているので、図書館で借りてきました。
『ヴィラ・マグノリアの殺人』と同じく架空の町、葉崎市を舞台におきる事件。見つかった死体は果たして誰なのか。
あまりストーリーを書いてしまうと読む楽しみがなくなるので書きませんが、事件に巻き込まれる女性や、地元FM局DJの女性、古書店主まで入り乱れてのスラプスティックなミステリー。死体が出てもコージーミステリーと言われるのはこのあたりが理由でしょうか。
★★★★
『魔法飛行』『スペース』 [ミステリー]
加納朋子のデビュー作である「ななつのこ」に連なる駒子シリーズ2作。
『スペース』の文庫版が出たので、旧作の読み直しとあわせて読みました。
『スペース』は、「スペース」と「バックスペース」の2作を収録。表裏をそれぞれの面から描いたというか。
『魔法飛行』も含めて、コージーミステリーの良作だと思うけれど、話が進むにつれて、話に凝っているところが、少々つらくなってくる。別に、変に凝らなくてもあっといわせることはできると思うんだけれど。
とはいえ、つまらないとか読みづらいとか言うわけではなく、ただ、ぼんやりと読んでいくとおいていかれるというだけ。
★★★★
『ななつのこ』 [ミステリー]
『切れない糸』 [ミステリー]
引きこもり探偵でデビューした坂木司の連作。
父親が倒れて、家業のクリーニング屋を継ぐことになった主人公。そこで出会う日常の謎を、同じように町に残って喫茶店のアルバイトをしている友人に話して解決してもらう、そういう構図の日常の謎解きミステリーの連作集。
『シンデレラ・ティース』で歯科という職業を詳しく描いたのと同様、今回はクリーニング屋という商売についてのいろいろをうまく織り込んでいて、そこのところも魅力。
★★★★