『カオスの商人』 [ミステリー]
コージーミステリーのシリーズ、主婦探偵ジェーン・シリーズ第10弾。
今回は、せっかくのクリスマス休暇に、ひょんなことからクッキー交換パーティーを主催する羽目になり、さらにそこにいけ好かないニュースレポーターもやってくることに。聖歌の集いやらプレゼントの準備やらでてんやわんやのジェーンだが、そこにさらに殺人事件が発生して、トラブルも最高潮に。
今回もジェーンは謎を解いて恋人・メルを助けることができるのか?
アメリカの中流主婦の日常をうまく織り込んだコージーミステリー。訳者が故・浅羽莢子氏から代わったが、抵抗感はあまりない。
★★★★
『シンデレラ・ティース』 [ミステリー]
ひきこもり探偵でデビューした坂木司の、歯科医院を舞台にしたコージーミステリ。
幼児体験から歯医者嫌いとなったサキは、大学二年の夏、母親の計略にひっかかって、叔父が勤める歯科医院の受付のアルバイトをすることになる。そこで出会った歯科技工士は寡黙だが、患者にまつわる謎を見事に解きほぐすのだった。
よく取材されているようで、歯科医院の描写もわかりやすい。連作のコージーミステリで、患者にまつわる謎をひとつひとつ解き明かしながら、歯科医院で働く人々と交流を深め、最初はいやいやだった歯科で働くことにやりがいを見つける過程も丁寧に描かれている。
主人公のサキは、度々、沖縄でアルバイトをしている友人にメールしたり電話しているするのだが、そちらの様子は別の作品で展開しているのだとか。こちらも楽しみだ。早く文庫化してほしい。
★★★★
『ゆめつげ』 [ミステリー]
幕末の江戸。小さな神社の神官兄弟の兄、弓月は夢告ができた。が、これがあまり実利には役に立たない。おかげでというか、神社の修繕の金にも事欠くありさま。そんな折り、江戸の大店の息子の行方を捜して欲しいという依頼が来る。役に立つだろうかと思いつつも、謝礼欲しさに依頼を引き受けるが・・・
「しゃばけ」シリーズで、江戸時代を舞台にしたファンタジーを描き人気を博している作者の、「しゃばけ」とはちょっと違った作品。夢告という能力以外、あやかしも何もファンタジーなものは登場せず、普通の人々が活躍する。それでも、「しゃばけ」シリーズにある、市井の人々への暖かい視線は変わらない。
オチというか、夢告の告げる真実の謎解きは、それほど「言葉」にきっちり左右されるというのが、私としてはちょっと微妙な感じ。
シリーズにもできそうな設定だが、今のところは1作完結。
★★★★
『幽霊屋敷の謎』 [ミステリー]
『幽霊屋敷の謎』 (創元推理文庫―ナンシー・ドルーミステリ (Mキ5-2))
- 作者: 渡辺 庸子, キャロリン・キーン
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/12
- メディア: 文庫
ナンシー・ドルーのオリジナルシリーズの邦訳第二弾。
さすがに昔のジュブナイルだけあって、読み応えとかそういう点ではいまいちかな。
でもまあ、昔なつかしという雰囲気はあると言えばある。
★★
『古時計の秘密』 [ミステリー]
『古時計の秘密』 (創元推理文庫 M キ 5-1 ナンシー・ドルーミステリ 1)
- 作者: キャロリン・キーン
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/11
- メディア: 文庫
アメリカの少年少女向けミステリーシリーズのロングセラー、らしい。
昔、このシリーズを何冊か読んだので、懐かしさ半分で読んだ。
描写が淡白で、謎もストーリー運びもストレート。ロングセラーの最初の話ということで、書かれた時代の古さが感じられる。勧善懲悪の度合も、物凄くはっきりしていて、ちょっと興醒めするくらい。時代を感じますねえ。
その辺の判りやすさから、肩に力を入れずに読めるが、読み応えとしてはもう少しか。
★★
『少女には向かない職業』 [ミステリー]
直木賞を受賞した桜庭一樹の作品。
主人公の少女は、二人の人間を殺した。少女には殺し屋は向かない。
桜庭一樹は、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』や『荒野の恋』を読んだが、その独特の世界はこの作品でも変わらない。
クラスで明るく人気者の主人公は、実は子供に関心の薄い母と、事故で海に出られなくなった義父の家には帰りたくない。ゲーム仲間の少年とゲームセンターで遊んだりして、家にいる時間を少なくしていた。
そして、夏がやってくる。
その夏、目立たないクラスメイトの少女と言葉を交わすようになり、学校では見ない新しい面を見ることになる。そして、それが・・・
純粋な魂が、純粋故に苦しむ。そういう葛藤が苦しいくらいに描かれている。
★★★★
荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)
- 作者: 桜庭 一樹
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2005/05
- メディア: 文庫
荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)
- 作者: 桜庭 一樹
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2006/01/30
- メディア: 文庫
柚木草平シリーズ(1~6) [ミステリー]
中年私立探偵・柚木草平を主人公に据えたシリーズが、創元推理文庫で順次出ているのを纏めて読んだ。
現時点で第六弾まで出ている。
例外もあるけれど、柚木の視点で物語は進む。
柚木草平は、元警察官で、今は週刊誌のライターをしつつ、アルバイトで探偵もしている。妻子とは別居。月に一回、娘とあう約束をしているが、ついつい後回しにしてしまい、妻から非難の電話がかかってくる。
女性に目がなくて、いつもふらふらしている。恋人は警察のエリートで、時々仕事を回して貰っている。
仕事柄生活は不規則で、朝からビールを飲むこともある。
という感じで、うらぶれた私立探偵(でも、女好き)が、警察時代の経験もいかして、事件を追う、というのが主な物語の構造。見かけはだらしなくても、事件を追う目は確か。
どことなく、刑事コロンボとか思い出させるかなぁ。
なかなか面白いシリーズです。
★★★★
『ヘビイチゴ・サナトリウム』 [ミステリー]
創元推理文庫は、最近こういうソフト路線、ジュブナイル寄りの作品が増えましたね。
中高一環の女子校。屋上からの飛び降り自殺と思われる事故が続く。主人公たちが、身近な、部活の先輩の自殺にとまどい、理由を追ううちに、高校教師も墜落死。自殺か、事故か、それとも殺人なのか。
三人称で書かれ、視点が、女子高生、教師など、章により変わるので、心情に対する共感という意味では低く、そのあたりはジュブナイルやライトノベルというより、やはりミステリという感じだけれど、謎解きがどうかというと、憶測と偶然が錯綜して、純粋な謎解きでもないし、広い意味でのミステリではありますが。
★★★
『砂の城の殺人』 [ミステリー]
アルバイトをしては、殺人事件に巻き込まれる女子高生・倉西美波。
今回は、写真撮影の手伝いをした所、写真家の廃墟となった実家で、昔、行方不明となった母を探すところにつき合わされることに。そこで起きる殺人事件とは。
ライトノベル・レーベルから創元推理文庫に引っ越してきたシリーズの新作。
本格指向なところもありながら、ライトノベル・レーベルで始まったシリーズらしい、コージーミステリー風味を合わせ持つ。それゆえのキャラクターのちぐはぐさもあるかな。主人公・美波は探偵役でもワトソン役でもなく、どちらかというと、狂言回し。今回の事件でも、アルバイトでミス連発、事件に出くわしても騒いだり、犯人の仕掛けに躍らされたりと、いいとこなし。
謎解きは、主人公の友達が行って行くのだけれど、当たりもあればはずれもあり。はずれの部分は別の友人が、知り合いの大学生(ボーイフレンド候補?)が、真相を解き明かす。
まあ、推理の当たり外れ、というところでは自然な感じだけれど、読んでいて、結局正解がどうなのかよくわからなかった。謎解きの部分にメリハリがないのかなぁ。
という感じで、指向する所は好みにあっているのだけれど、今ひとつこなれていない気がする。ライトノベル的なところと、本格なところと、二つの側面が互いに良さを打ち消しあっている感じがする。難しい所だね。
★★★
『天使が開けた密室』 [ミステリー]
元々は、富士見ミステリー文庫に上梓された作品の、出版社・レーベルを変えての再刊。
主人公、美波は、行方不明の父親を探す旅費をためるため、アルバイトに励んでいる。そんな矢先、バイト先のトラブルで借金まで背負込むことに。
そこに舞い込む「寝ているだけで一晩五千円」というバイト。いかがわしいバイトではないというので、引き受けることにしたが・・・
まあ、そんなに美味しい話があるわけはなく、大変な思いはするは、殺人事件に巻き込まれるはで、どうも、主人公は貧乏くじをひく役回り。解説にも書いてあるが、探偵役でもワトソン役でもなく、どちらかというと、事件に巻き込まれて解決を依頼する依頼人の役回りなのだが、意図せざる所でトラブルメーカーというところか。
ライトノベルでミステリという制約の中で、うまく纏まっているとは思うけれど、ミステリに軸足がある感じで、そのあたりが、創元推理文庫で出直した由縁かも。でも、本格ミステリという銘は微妙な気もするけど・・・
★★★