『しゃばけ』『ぬしさまへ』『ねこのばば』 [本(その他)]
日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作の『しゃばけ』と、そのシリーズ作。
江戸の大店(おおだな)の一人息子、一太郎は小さい頃から身体が弱く、過保護な両親、手代に囲まれて外出もままならない。
こっそり抜け出したところ、夜、帰り道で人殺しを目撃してしまう。それを始まりに、殺人事件が続くが、犯人はそれぞれ別人。一体何が起きているのか? 若だんな・一太郎は、家族同様の妖(あやかし)たちと、謎を追う。(『しゃばけ』)
『しゃばけ』は、娑婆気。俗世の利益にとらわれる心、とのことだけれど、最後まで読み、「娑婆気」にとらわれないとどうなったか、と考えると、この言葉がこの物語のひとつのキーワードになっているのが判る。ま、当然といえば当然。
『ぬしさまへ』以降は連作短編集だが、若だんなやその周囲の人々、手代の妖(あやかし)も主人公に採りあげて、多彩。
時代を江戸時代にとり、いってみれば時代物なのだけれど、武士や岡引などの権力側でも、それと対立する義賊でもなく、市井の商人(主人公一家は江戸でも有数の富裕な商家だが)を中心に据えてる。しかも妖(あやかし)という存在を置くことで、現代人からみればファンタジー要素を盛り込み、かつ、往時の人々の身近にあった「幽霊」「妖怪」という不可思議の解決機能を自然なものとしている。
他にもシリーズ作があるようで、文庫化が待ち遠しい。
★★★★★
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