『ホテル・アイリス』 [本(その他)]
小川洋子、1996年の作品。
ぱっとしないホテル・アイリスの経営者の娘である私は、ある日、ホテルの利用客である男に魅入られた。年取った男は、連れの女性とホテルで騒動を起こしたのだ。その時の彼の声が、私を捕らえた。そして、私は・・・
密やかな閉じた関係の「私」と男。「私」はホテルでも母親に従業員としてつかわれ、拘束され、「私」は男との関係に嵌まり込んで行く。
小川洋子の小説は静かだ。静謐で、時折発する微かな物音が響く。そのわずかな物音さえ吸い込まれてしまうような、静かな空間で、人は生き、出会い、話す。
喧騒に囲まれた現代のわれわれとは別世界を、小川洋子の小説からわれわれは垣間見る。
★★★
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