『風の影』(上・下) [本(その他)]
友人から、ジョナサン・キャロルが好きなら、と勧められて読んだのですが、確かに、キャロルファンなら気に入りそうな話です。
ただ、キャロルと比較してどうこうという程、似ているかというと、細かく比べるとそうでもないかな。でも、雰囲気というか、そのあたりが似ているのは確か。
主人公・ダニエルが「忘れられた本の墓場」で出会った1冊の本『風の影』を軸に、第2次世界大戦前後とスペイン内戦ころのバルセロナを舞台に、ダニエルと『風の影』の作者、フリアン・カラックスの不思議な相似を描きつつ、フリアンとダニエルに起きる謎と危機をすこしずつ解き明かして行く。
キャロルは、長編であっても比較的直線的に突き進む感じがあって、言ってみればジェットコースターに乗って、じりじりと上がって、一気に滑りおりていく感覚があるけれど(特に初期の作品)、この作品は、もう少し複雑に過去と現在が入り交じり、絡み合っている。
バルセロナという、イメージとしては明るい都市を、歴史的背景を含めて陰影を描いている所も本作の魅力のひとつだろう。
★★★★
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